第三章 某かつらメーカー 終わりなき育毛ケア

育毛ケアプログラム始動

さて いよいよ私の育毛ケアが始まりました
せっせと毎週 あるいは隔週のペースでかつらメーカーに通いのです
1ヶ月も過ぎればカツラメーカーのビルテナントに入ることに
なんの躊躇いも抱かなくなたいました
慣れってすごい!

育毛ケアはいつも同じプログラムをルーチーンのように行います

  1. ホホバオイルを頭皮に塗布し10分ほどスチームで蒸らす
  2. 頭髪洗浄 専用のシャンプーで優しく洗浄
  3. 4℃の冷たいお水で濯ぎ
  4. コンセランとかいうマシーンで頭皮マッサージ
  5. 人工毛を自毛に植え付ける(毎回1000本くらいだったかな?)

おおよそ1時間30分くらい
終了し建物を後にする私は本当にワクワクしかない!
これで自毛が取り戻せるぞ!!

しかしその希望も
日に日に不安が襲ってきてしまうのでした

通い始めて3ヶ月ほど経過

なんだか全然効果ないなあ 抜け毛は変わらないし 髪の毛増えないし
今思えばたった3ヶ月 しかも自宅では大してケアを行なっていないのだから
そりゃあ効果は限定的だろうね
しかし即効性ばかり求めるあまり不安ばかりが募りました

当時は もう任せっきりで抜け毛は止まり髪の毛は復活する!
と信じきっていましたから

自宅でのケアはかつらメーカーのでケアとほぼ同じ工程

 ①ホホバオイルを塗って10分浴槽に浸かってのんびり
  (スチーマーなんぞないので浴槽で汗をかいて皮脂腺を緩める)
 ②かつらメーカーオリジナルのシャンプーで優しく洗浄
 ③濯ぎ さすがに4℃の水は作れないから シャワーでそのまま濯ぎ
  (温度なんて気にしない)
 ④コンセランなる頭皮マッサージきで10分
  その間 電動マッサージャーも併用

どうですか この大変な作業

自毛を取り戻したい!

という心とは裏腹に

こんな面倒なこと 一生続けなければならないのか?

と思い始め
徐々に怠け始めてきたのです
元々 何事も長続きしない私の性格 こんな時も本領発揮
自宅ケアから遠ざかっていきました

きっと当時 このケアを真剣にしっかり行なっていれば違った結果が
得られていたのかも知れません

が 社会人1年目 仕事も楽しい 遊びも楽しい 毎日飲んで帰って
ワクワクな社会人!

 はげ??もういいんじゃない!

なんて開き直りの気持ちさえ芽生えてきました
そして頭皮は正直なもので 抜け毛は日に日に増えていくのでした

通い始めて4ヶ月経過のボヤキ

かつらメーカーへ通い始めて4ヶ月くらいたった頃
(ここは欠かさず通っているのだ そりゃ高い金払っているからね)

効果が現れないことを女性スタッフにボヤきました

女性スタッフ:「まだまだこれからです しっかりケアしていきましょう」

そうだよね 自宅ケアもサボっているもんね

 人工毛の結衣つけの後 毎回 頭頂部を鏡で見せてもらうのですが

徐々に頭皮が隠れ始めていることがわかりました 

 あ!なんかいいんじゃない!

ここでまた油断の芽が出始めます

『もし禿げてもかつらとか被っていればいいんじゃないの?』

そう 私は育毛というプログラムから心が離れつつあったのです
なんで人生貴重な時間を育毛のためにささげあきゃならないんだ!と

危機!!人工毛結付け バレるか!!

そんなある日 上司と仕事で宿泊を含む長い長い1ヶ月の出張に行くことなりました

かつらメーカーでの育毛ケアを1ヶ月受けないなんてちょっと不安
育毛ケアがまともにできないではないか!
ホホバオイルと専用シャンプーだけは携行して毎日せっせと頭皮洗浄は
行いましたがマッサージ機は使用できない もう不安が募りますよ

そしてそれは出張も終わりに近づいた頃 ある事件が起きました

車で移動中(私は運転手)助手席に座っていた上司が
徐に手を伸ばし私の後頭部に触れようとしているではありませんか

一瞬私は何が起きるのか?え?同性愛?な訳ないか

と思う間も無く髪の毛を摘んで

「埃か?毛糸か?女性の髪かな?なんかついてるぞ!」

プチっと痛みを伴いながら引っこ抜いたのです!

そう!人工毛を!上司は引っ張り 抜いたのですよ!!

私は一瞬痛みを伴い「痛!」と小さく発生
上司は 少し申し訳なさそうに
『あ、ごめん! ごめんごめん
一本だけすごく長かったのか 髪の毛だとは思わなかったよ』

  私の心は怒りはなく不安と恐怖だけが支配し始めました
1ヶ月もすれば髪の毛は結構伸びる
そうすると自毛に結い付けられた人工毛は徐々に位置が上がってくる 
場合によては緩んで毛先の方までずれて来てしまう

もうこれ長期出張どころかプライベートな旅行も諦めなければならないのかよ!

そうこんな不安が全身を覆った出来事なのでした

ついにカツラの提案 始まる

そんな出来事があった後 かつらメーカーを訪れる

  • 人工毛のずれがあったこと
  • 長期宿泊を伴う出張や旅行に不安があること

を相談しました

女性スタッフ曰く
『全国に店舗があるのでもし休みの日などに訪問できるのであれば
 ご予約できます』

おいおい簡単にいうなよな!と心の中で呟き

「そうですかぁ」と寂しそうに私は軽く返事をしたのでした
しょげている私を見てすかさず
女性スタッフ『もしよければ外出用のウィックをつけてみる などいかがですか』

私『ウィックってなんですかぁ

女性スタッフ
 『かつらですね 自毛にパチっとつけるような簡単なものです
  サンプル持って来ますね。少々お待ちください』

私の返事も待たず女性スタッフは個室から出ていきました

そして数分後 男性スタッフと共に フワッとした人工毛の塊

 『かつら』

を持って来たのです
初めて生で見ました なんだこれは!かつら!!??
俺が!?20代で!冗談じゃないよ!とまた心の中で呟いていると

すかさず男性スタッフ

『ちょっと試着してみましょうか』

返事も待たずに徐に私の頭髪に『パチッ!パチッ!』と慣れた手つきで止めていくのでした
そして鏡で全体を見させてくれました

おおおお!!!!!なんだこのイカしたダンディーな男は!

若々しいぞ!かっこいいぞ!ふさふさじゃないか!!ちょーーかっこいい!

もう私は自分自身が自分では無いような自分自身なような
不思議な気持ちに覆われてしまいました

否!!瞬く間に冷静に我にかえり 

「いやいやいや! これかつらじゃん!」

と心の呟きと共に
二人のスタッフに 丁重に今はいらないことを伝えました
男性スタッフは爽やかな笑顔で ”もしまた何かあったら相談ください”
と言い残して部屋を後にしました

その日は特にアクションも起こさず帰宅したのですが
あのかつらを被った自分の姿が昼も夜も脳裏から離れず
日に日にあのかつらの存在が私の心を支配していくのでした

そう これこそが私がこの通っていた企業店舗を

『かつらメーカー』

と呼び続ける所以なのです
育毛クリニック 育毛サロンとは呼ばず『かつらメーカー』です
意図的か自然の流れかいざ知らず
とにかく何かしら追加で色々と売りつけてくる商魂
本当に逞しいです
もうすっかり私はこの『かつら』に心が蝕まれ始めていたのです

いよいよ装着。。。か

それから約1ヶ月ほどして
かつらメーカーでせっせと育毛プログラムを施してもらいながら

ふと私は

『あの先日のウィックの件なのですが。。。』

女性スタッフは作業の手をピタッと止め話を聞き始めました
(多分ニヤリとしたはずです)

『ちょっと検討してみたいのですがどのくらいの値段なんですか?』

女性スタッフ:『少々お待ちください』

と部屋を後に(とてもルンルンで小走りな感じ だったように見えた)

またまた男性スタッフ登場 読んで無いよ〜!

長々と説明が始まり頼んでもいないのに頭の形をかたどり始めました
(なんかゴム状のシートを頭に貼りあわせマジックみたいなもので描いてます)

私は気が小さいので まあもうなるようになってしまえ!と
スタッフ二人のナスがママ状態
一通り作業が終わると女性スタッフから

『およそ1週間で完成しますよ!本当に見違えると思いますよ♪』

なんかもう契約前提な話になってるし。。。
そして契約書と頼んでもいないのにローンの締結の書類まで準備して。。。

この閉ざされた空間 20代前半の社会人駆け出しの気弱な男は
この状況 もう餌食です 男性スタッフの爽やかな笑顔の裏には

『絶対契約させるぞ!』

みたいな気迫満載!

そして女性スタッフに『何かあったら私に相談ください』とポンと肩を叩きつつ告げ
私には『相談事は女性スタッフに遠慮なくどうぞ!』と言葉を残して立ち去りました

私は流れに乗って契約書を書き始め無事??契約成立

女性スタッフの嬉しそうな笑顔(結構可愛いのですよ)と共に

『これから華やかな生活が送れますね』なんて声がけ

私も思わず苦笑い 心の内を察せられまいと取り繕う笑顔がさらに苦笑い

こうして私は禁断の『かつら』を手に入れたのでした

そして某大手かつらメーカーとの訣別 そして新たなる
自分自身による育毛プログラムを始めるのであった


       

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